ほうこくかいのこと

先週、私はゾンビの様になっていました。

職場の、学校の同僚から、先生滞在もそろそろまとめの時期でしょ、まとめに入らないとでしょ、という善意のメールが送られてきたのは11月のことだったか。そのときの私は「なにいってんの!こっちはやっと分析が軌道に乗ってこれから測定をがっつり始めるところなんだよ!まとめどころか今からスタートだっつうの!」とかなりすさんでおりました。そこから2ヶ月半、先週私のすさみっぷりはピークを迎えておりました。というのも、本当にまとめないといけなかったから。

私の滞在は10ヶ月あまりでしたが、ちょうど10ヶ月を迎えた先週、ここでこんなことしました報告会、が省内で設定されて、そこでプレゼンをすることになったのです。同僚が上司から預かったタイムテーブル(クメール語)を私に訳しながら説明する。「初めにディレクターの挨拶でしょ、我々の発表があって、あと偉い人のコメントと謝辞があるからね・・・そうだ!おまえ、フォーマルがいるぞ、作業着着てくるなよ!」

同僚の心配事、一番が、この日本人はフォーマルを持っているか、でした。なんとか数十枚のスライドを作り、装置や分析の説明、測定データについて、など、内容を2人でまとめる。発表前日、チーフが請け負い仕事の測定データを持ってやってくる。「このデータ、確認をしてほしい、確認をしたいんだけどどうだい?」・・・ぶっちゃけ私は今、明日の発表のための原稿を作成していて、本当にそれどころでは無いのです。十数分ほどデータの確認をして、確かに微妙なので、発表が終わったらね、終わったらちゃんと見るから!とお引き取り願う。発表当日、今度は同僚が来て、「俺の発表なんだけど、作ったスライド、いろいろ知りたいことあるんだけど」と質問をたんまり。この同僚、頭が良すぎて、当然わたしより数倍理論的かつ回転が速く、やりとりが大変、質問があまりに的確過ぎて回答に手が抜けない。が、私はいま、今日の午後の原稿を書いているのです!わかりますか?君はクメール語で発表するでしょうが私は英語で発表するのよ!むきー!となったら、わかったわかった、後二つだけ、とそれでも小一時間粘っていきました。

同僚たちの熱心さにより私の発表準備が脅かされている・・・とおもっていたのですが、報告会の30分前、発表会場に行ったら、私の発表には同僚の通訳を入れるように、との上司からの指示。なぬー、持ち時間ぎりぎりにスライドを作ってしまった・・・どうしよう?と同僚に行ったら、俺の時間を減らすからなんとかなるよ、というので、任せることにした。

わたしの発表は、私が1スライドか一塊のスライドごとに英語で説明し、それを同僚がクメール語でもう一度説明するスタイル。初めは結構几帳面に説明していたのだが、途中で気が付いた、同僚のフォローすげえ。私が言ったことの倍くらいクメール語で説明をしている。あー、これ、私は最小限にスライドの内容をしゃべったほうがいいのではないかしら?と時間削減のためにも説明を控えると、同僚もそれを汲んだらしく、私が言いたいことを聞いている人に伝わるようにカンボジア語に直してくれる。なんだ・・・このあまりにもできすぎた同僚は。10か月一緒にやってきただけのことはある、私の適当な英語を、聞き返されることはほとんどなく、唯一いくつかわからない英単語(テクニカルターム)を伝えただけでなんとも楽にスムーズに発表が終わった。

しかも本当に、私の発表が伸びた分、自分の発表を高速に簡潔にはしょり、時間内に収めていた。超ぴったり!君は超人かなんかか。偉い人のコメントスピーチが終わり、花束と記念品を頂き、ああ、本当におわったんだなあ・・・と会議室前に用意されていた果物をもしゃもしゃ食べながらほっとしたのでした。てゆうかほんとうにほぼすべて同僚のおかげ。私の適当な発表も同僚の通訳でフォロー。そもそも分析装置の説明や、分析法のトレーニングも私の説明の10倍を理解する同僚の能力によるもの。その同僚が一番熱意をもって、時間を使って私の話を聞いてくれるので、その彼から他の同僚に説明が行くので、他の同僚も内容を理解する。すべてを君に助けられたよ。あんたがいなかったらまともな仕事にならなかった気がするよ。

分析機器の調整と確認、コツコツ作ってきたマニュアルの印刷、状態管理ノートの整理の仕方、など、あとまだ少し伝えなければならないこと、準備しなければならないことがあるが、何よりこれだけガッツリやってきた同僚たちとなら、日本に帰っても簡単に連絡をとりあえるだろう。これで終わりにはならないだろう。でもひとまず、10か月間滞在させていただいた環境省のみなさんに、ラボの同僚に、力のある上司に、毎日ラボを賑やかしている課のみんなに、ラボカーのドライバーに、いつものガードマンたちに、すべての環境省スタッフに、本当にありがとうございました。

注1 しかしながら、万能な同僚が取ってくれた花束・記念品贈呈の写真はぶれてました。いい、人間は完璧でないほうがいいよ。