ぐるぐるチキン

プノンペンの街角では炭火で焼かれたチキンがぐるんぐるんとまわっている。子豚やアヒルがぶら下がっている街角も一般的な風景だが、私は断トツでこのぐるんぐるんチキンが好きである。ぐるぐるチキン、つまるところ鳥の丸焼き、なんですが、内臓を抜いた鳥をくちばしから頭くびまで全部ついた状態で鉄の棒にさし、炭火の上でじっくりあぶる。途中刷毛のようなもので、油やシーズニング、はちみつなどをぬり、こんがりてかてかに焼き上げる。

一羽ちょうだい!というと、そのパック絶対一羽おさまんないでしょ・・・というサイズの発泡スチロールのお惣菜ケースのようなものに、むりやり詰め、臭い葉っぱときゅうり、ライム、2種類のたれ(タマリンドのスィートチリソースと塩コショウ)が詰まったビニル袋をつけてくれる。きゅうりは丸ごと1本、ライムもごろっと2個がセットされ、自分でさばくのが面倒なら、ばらして、といえばおばちゃんがあっという間にいくつかの部位に分けて、やっぱり切っても収まらないじゃん、という感じの発泡スチロールケースを作ってくれる。

ライムは持ち帰ってから切り分け、ライムジュースを作って塩コショウと混ぜるのだ。これが、塩コショウライムだれ、クメール語ではおんばる・まれっ・くろいちゅまーです。すべてにおいて万能のソースです。これでご飯を食べてもおいしいです。が、今回は鶏肉。タマリンドの少し酸味の効いたニンニク入りの甘いチリソースも絶品だが、ただの塩コショウライムがなんでこんなにうまいのかな・・・といえばたぶんカンボジアの胡椒がうまいからだろうな。何しろ、ほんのり甘くててかてかになった鶏肉の、しかも地鶏の、噛み応えたっぷりのしっかりした味に何ともあう。

臭い葉っぱはドクダミを少しマイルドにしたような味で辛く苦い。これと、キュウリ、鳥、葉っぱ、キュウリ、鳥・・・と繰り返していると、丸一匹なのにあっという間にペロッと食べられそうだから怖い。ほんのり炭のにおいの鶏肉はチキンサンドや鶏肉のっけご飯、チリソースで、にもぴったり。これだけ楽しめる鳥の丸一匹やき、ぐるぐるチキンは2万リエル、5ドルほどです。日本円だとワンコインでおつりがきちゃう贅沢、ぜひお試しください。

注1 店によって首から先がないところもありますが、脳みそと首肉がおいしいので首ありを買うといいと思います。首肉は山蛇の燻製に似た味がして大変おいしいです。うん、ぜんぜんよいたとえになっていないことはわかっている。