番外: カンボジア正月とマンゴー

 ある日職場に行ったら、職場が仕事どころではないことになっていました。なんだこれは、と聞くと、クメール正月だよ!とのこと。ゲートを入ったところ、祭壇のようなものが立ち、花が飾られている。その後、環境大臣をはじめとする偉い人が祭壇の前に並び、お坊様だろうか、いろいろなことをしながら何か唱えたり、花を撒いたり。そのあとでは伝統舞踊があったり、思わぬところで面白いものが見られた、と喜んだのが先週の金曜日のこと。

 さて、4月13日、あさってからが本当のクメール正月です。つまり今日は日本で言えば、12月30日、ということ。朝からそもそもラボの人間が少ない。いつもの半分くらいしかないなーと思って聞くと、正月だから!といわれた。来ない人はもう田舎に向かって移動を始めているそうな。
 昨日測定していた試料の説明を、PCの前で同僚に向かって始める。一人に向かって始めた説明を最終的に3人がわらわら集まってきて聞く。ひととおり終わったところで、大丈夫?と聞くと、なかの一人に、突然聞かれた。
「お正月はどこに行く?」
・・・君たちは学生より唐突だな!というか私は今、試料の説明をしていたんだけど。もう、彼らの頭の中が正月で一杯過ぎる。そしてその質問は別々の人からもう10回くらいはされた。彼らにとって正月は一大行事だ。しかもラボのチーフには、「明日はきっとお前しかこのラボには来ない! だからお前は、朝来て、みんなが来ないことを確認して家に帰ればいい!」というなぞの予言をされる始末。みんな前倒し正月か。

 昼休み、日本に送りたい郵便物があったのでぺらぺらと持ちながら、MoEのゲートを出たところで、先に引越しも手伝ってくれた友人に会った。最寄の郵便局を聞くと、知らない、という。まあいいか、おっぱにはーと思っていたら「最寄は知らないけどプノンペン中央郵便局まで乗せてってやるから車に乗れ」という話に。それはどうもありがとう。で、郵便局で手紙を出したら今度は「連れとご飯を食べるからお前も一緒に食べろ」と。それはどうもありがとう。空港の方面に向かって走ること20分ほど、ついたのはどう見てもレストランではない。
 ゲートを抜けて車を泊めると、なにやら学校のようだ・・・?で、入り口を抜けたらそこはパーティーでした。ここは職業訓練校らしい。夫妻とスタッフさん。いやあ、何がどうなったんだか、昼ごはんを食べに家に帰るつもりが(注1)、いつの間にか知人のクメール正月パーティーに迷い込んだ。いい匂いの大量の茹でエビ、焼きイカ、塩漬けライムのチキンスープ、ジュースにカンボジアビール、そして貝(生)。

貝(生)!

 ぜんぶすっごいおいしかったんだけど、貝(生)は殻をあけて生と気づきさすがにひるんだ。こちらの人はこれが大好きらしく、血の滴る(注2)なま貝をパクパク食べる。大丈夫じゃないかもしれない、と思ったけど腹をくくって食べる。出されたものは食べる、がモットー。進められるまま飲み、食べ、浮かれ気分で満腹でした。外でのパーティーだったんですが、「あの木になってるのはなに?」と聞いたら「マンゴーだよ」とその場で収穫をして、丁寧に皮をむいてくれた友人カンボジア人男子、本当に親切です。人柄だとは思うけど、何か昔日本人にすごく親切にしてもらった記憶でもあるのだろうか、と思うくらいの親切ぐあい。そうだったら昔の彼に親切にした人、ありがとうございます。おかげさまでございます。
 ホストの夫婦がさらに別の木からも形の違うマンゴーを取ってきて、これでもか、と袋に詰めてくれた。そして今、明日どころか今日の午後から職場には誰もいませんが、私の机の上がマンゴーだらけなのはこんな事情からです。ではでは、みなさまよいお正月を!

注1 昨日市場でトマトを5個買って、家に帰ったら8個になっていた、という少し不思議(SF)が起こったのでトマトを食べまくらなければいけなくなった。市場のおばちゃん、お金の計算を簡単にするために増やしたな・・・・。
注2 貝の血の色が赤いのでなかなか怖い。魚は赤い血はわかるんだけど、貝ってふつう赤くないよね・・・?書いている今おなかがちょっと痛いような気もするが気のせいに違いない。