旅と日常と、ホテルと住居について

 旅行に出ても出張をしても、日本でも海外でも、ホテル暮らしを苦に思ったことがなかったが、それはあくまで「旅行」だったからなのだと最近気がついた。「旅行」の目的は大概私のような安旅行者の場合ホテル以外のところにあるのであって、タダ寝るだけのホテルにはそんなに思い入れがない。ホテルでできることも、寝ることとシャワーを浴びることだけで十分なのだ。ゲストハウスやドミトリーでもいい(注1)。もちろんホテルステイを楽しむ、なんていう旅行の人は別でしょうけれど。
 ただ、ここで生活をする、と思ってやってきた場合には、ホテルの部屋でできることと家の中でしたいこと、が、その違いがストレスになる。早く自分の家に移りたいと思う。旅行中のご飯は外食でいろんなものを食べたいが、生活ではご飯は自分で好きなものを作りたいし、服はスーツケースにたたんであるのでなく洋服棚に入っていてほしいし、本はバックパックから引っ張り出すのでなく本棚に収まっていてほしい。なにより器用貧乏は早く手いたずらものを広げたい。工具も、その他いろいろも(注2)。
というわけで、引越しがすんだところから、やっと、旅行が生活になる。

 引越しをしてから、はたと気がついた。タオルがない。ホテルにはタオルあるもんなー。で、プサー(市場)で知ったのだが、この国タオル高い。お値段が。日本に比べりゃ安いのだが、そういわれてみるとタオルか・・・国内生産してないってことか?売り子のおばちゃんにも、これはベトナム製、これは中国製、といろいろ説明された。四国は今治のあれに触らせてみたいよ!あれは日本の宝だなー。なんにせよ、これまでタオルの重要性についてあんまり考えたことなかったけど、やっとわかりました。タオル大事。欧米人バックパッカーの皆さん、これまで馬鹿にしててごめんなさい。自分が日本手ぬぐいやクロマー(注3)で済ませてるからって「なんでバックパックにあのくそでかいバスタオルを突っ込んでるんだ?」とか言っててごめんなさい。タオル大事。タオル買ってからライナス症候群かのようにタオルいじって寝てます。

ああ、旅行と生活に関する考察がライナス症候群で終わってしまった。
 

注1 日本でも増えましたよね、ゲストハウスやドミトリー。沖縄なんかは昔から結構多かった気がするけど。ゆんたく文化か?でも海外の男女同室ドミトリーはなあ・・・男女ともにやたらとみんなででかいし(私も日本人にしてはでかい方)。そしてにぎやかだし。引越しの家決めの際、アパートのオーナーが、「もうひとり見にきてる人がいるんだけど、あなたが決めてくれるなら割引するから決めてほしい、日本人に貸したい。」といってくれたのが印象的でした。普通もう一人いるなら値引かないでしょ。理由は「静かだから」らしいです。どうかなそれは・・・一番日本人らしくない日本人に家貸しちゃったね、オーナー。

注2 移住のためスーツケースにつめたものが、実験器具や工具などで、衣料品など皆無でしたが、結果的に手いたずらの趣味(木工とか裁縫とか工芸とか)が仕事と実益を兼ねていてあんまり問題なかった。

注3 カンボジア版手ぬぐいのような布。織物、素材や色も様々、とてもきれいです。コットンのものは帽子から手ぬぐいからオムツからゆりかごから雑巾まで、あらゆる用途を見るところも日本手ぬぐいに似ている。