歓喜も書かせて

先週の初め、何の前触れもなくあれだけ苦労して設置したUPSが壊れました。メインのディーソンター(ブレーカーのようなもの)を入れてもエラー音を発するだけでぜんぜん動く気なし。当然UPSが動かなければICP-MS(重金属分析装置)もGC/MS(私がメインに使う微量物質測定装置)も動かせません。正確にはGC/MSは動かせるけど、停電時の保障なし。ICP-MSにいたってはディソンターでUPSに直接つないで主電源を取っているので、UPSが動かない限り絶対に動かない。

これだけでもため息つきたいトラブルですが、翌日、GC/MSを動かないままにはしておけないので、UPSの保護下ではないけど別電源に接続して起動させました。
特に何も問題なく起動し、PCと接続し、ポンプが動いて真空が確保できて、さて、リークが無いかなどのチェックをしようと思ったら・・・。MSの心臓部ともいえる、導入された物質をイオンにする部分(イオン源)がまったく動きません。電流のエラーがでてとまってしまう。なんで!

とりあえずいろいろ確認してみる。GCカラムの接続位置が悪いか・・・?そうでもない、フィラメント(イオンを作るため電子がでる)に問題があるか・・・?なんともない、念のため交換、やっぱり関係ない、イオン源と装置の接触端子が・・・?書いてしまうと簡単ですが、この一つ一つを確認するのに、毎回装置を起動して、停止して、真空状態になるのを待って(大体1時間から1時間半まち)やっぱりダメで切って、をするんです。時間もかかるし精神も磨耗する。
最悪の場合、基盤にエラーが起きていたら、UPSの故障に関連していたら、エンジニアを海外から呼ばなければいけなくなったら・・・その時間とお金は・・・と言うことばかりが頭をよぎる。
でも!その約1週間にわたった私の苦悩の日々が、悩まされ続けた問題が、ついに解決をみた!パーティパーティ!カンボジア人の同僚の口癖ですが本当にそんな気分です。と言うわけで今日は歓喜を書かせて。GC/MS正常起動までのダイジェスト、専門の言葉がわかりにくくてすみません。

故障発生の直後から、しつこく日本のエンジニアにメールや電話の連絡を入れる

今週に入り、夕方からであれば(日本ではすでに夜)、とインターネットで映像通信しながらの確認をしていただけることになる(注1)。

こちらでの4時半過ぎ、連絡をいただきPCでの通信が始まる。が、5時を過ぎて環境省のインターネット環境がダウンする(注2)。そこはわかっていたので自前のモデムを用意していたぜ。電源オン!

ぎゃー!!充電できてない!日本に向けて謝罪し、家にモデムの充電器をとりに走る。もう一回充電しながら電源オン!・・・・GC/MSの部屋が奥まったところにありすぎて電波が弱く映像通信など夢のまた夢

電話でやり取りをしてもらうよう頼み、GC/MSを起動して装置が真空になるのをまつ(約1時間)。待っている間に電話の充電が無いことに気が付く!

ぎゃー!!もう一回家に携帯の充電器をとりに走る。戻ってきて充電しながら、何気なく電話の利用可能残金を調べる

ぎゃー!!0.88ドルしか残ってない(こちらの電話はプリペイド式、通常国内通話だけなら1ヶ月に5ドルもあれば十分)

チャージカードを買いに走る。オヤジ、10ドルのカードをくれ!

「真空が引けました、作業できます!」と何も無かった振りをして日本に電話する。確認したがやはりうまく動かず、停止作業をし、部品を引っ張り出す。

やっぱりなんとか映像で見ないことには、となり、GC/MSの部屋からネット環境の良い場所へ部品を運んで、モデムで映像をつなぐ。映像を見ながらいくつかアドバイスを頂き、夜、偉い人まで誰もいなくなった環境省で金属部品をいじる(注2)

安全に家に帰れる時間(注3)を考え、分解洗浄の終わった金属部品を乾かした状態で帰宅

翌朝、組み立て、調整、設置、GC/MSを起動、フィラメント点灯の前に、とりあえず今アニミズムを信仰しよう、とそこいら辺にいるだろう何かに向かって拝む。

フィラメントON!・・・・・でーたーー!!ヘリウムはつないでないけど、質量数18、28、32、水と窒素と酸素のピークが出ました。イオン源が正常に働いている・・・。いつもはいらない水と窒素と酸素のピークがこんなに嬉しいのは初めてだぜ・・・。

ラボで小躍りしてなみだ目になっていたら、同僚に、どうしたの?おなかいたいの?あたまいたいの?と聞かれる。いや、あたまおかしいんだよ。午後、昼ごはんから帰ってきた仲良しエンジニアを捕まえ、事情がわかる人間にここぞとばかり経緯をマシンガントークする。まあ、カフェだ、とコーヒーをおごってもらう。お前の装置は動いて良いな・・・UPSどうしような、と言う話になる。

今日からはUPSの修理にスライド、エンジニアとがんばります  ←今ここ

修理に関係ない手順が増えているのはお前のおっちょこちょいのせいだ、とは思っても言わないのが優しさです。大概のトラブルはうまく直れば、ああ、なんだこれでよかったんだ、となりますが、実際日本で同種の装置を使っていたときにもさんざんした対応のはずなわけですが、異国でどうなるかわからない、ということがこんなにも怖いもんだと実感しました。ともあれ、次回同じことがあれば今度は対処できる、と言う意味でまたひとつ経験値が上がった!あくまで前向き能天気!このせいで明後日あたりの締め切りの日本語の書類出来てません!学校の事務の人ごめんなさい!

注1 エンジニアの方がつめているサービスセンターの営業時間などとっくに過ぎています。というよりカンボジア環境省に設置の装置が日本のサービスセンターのカスタマーサービス範囲内のはずがありません。すべてエンジニアの方のご好意です。本当にありがとうございます。カンボジア環境省はエンジニアの方にお礼状とか送っても良いと思う。
注2 省庁のしまる時間はきっかりで且つ早いです。朝は7時半くらいから人が集まりだし、夕方は4時半過ぎから人がいなくなってゆく。そりゃ5時にはネットも落ちるさ。でもここでは日本の某独立行政法人のように夕方5時半過ぎたらエアコンが切れるというようなことはありませんよ。みなさんご存知でしたか。日本の官公庁では業務時間過ぎたらエアコン切るんですよ。残業があっても残業代も出ないのに汗だくや震えながらでやるんですよ(ええ、ちょっと愚痴)。
注3 職場の周りにも夕方から屋台がでてにぎわいますが、大概の屋台は夜9時くらいまで。それを過ぎると人気がすーっとなくなるのでどんなに残業しても9時くらいまでが限界かと思います。異国での安全確保は自己管理で!