The 便利屋

そこらじゅうで私の名前を呼ぶ声がする!しかも幻聴でない。

昨日は国王のお母さん誕生日と言うことでカンボジアは休日でした。まあ正確には省庁が休みなんですが、知らなかったので職場にきたら、誰も居なくて、いつも路上駐車でいっぱいの省庁前はがらがらで、ガードマンがのんびりミーチャー(焼きそば)食べてて、わたしの顔をみて、全力で「ホリデイ!」を説明してくれた。英語がしゃべれないので、動きがとても大きい。大丈夫です、見てわかりました。こりゃホリデイよね。

さて、今日、休日の余波でラボが大忙し。持ち込まれているのはどっかの企業の排水のサンプルらしいが、私にノルマは無いはずなのに、何か忙しい気分に押されるのか、あいつも急がせろと思うのか、朝から息つく暇なく呼ばれる。
チーフと話している最中に、エンジニアが電話をしながら質問に来る。若手君と話している最中に卵屋が、明日採水に行こうと思うんだけど・・・と話に来る。
ついでに今日は学校が無かったのか、お母さんと一緒に出勤していた小学生女子が英語の宿題で行き詰まり、何かを訴えている。それはあのお兄さんに!

「排水のサンプルをとるのに採取器の予算を申請したいんだ!カタログのどこにあるんだ!」
ラボに存在する物品カタログはフランス語と日本語。わかるよ、聞きたくなる気持ちは。でもまず英語のカタログを入手しよう。な?バンドーン採水器かハイロート採水器あたりで良いんじゃないのか?なに?横方向に伸ばしたい?そんなもん釣竿にバケツくくって投げろ!(注1)

「ディーソンターって英語でなんていうんだ?アングェッターは?」
フランス語の英語訳を私に聞かれたってわかるわけが無いんだけど、それはブレーカーとコンバータ!

「TOC計(水中(等)の炭素量を測る装置)の予算申請したいんだけどうちのラボにあってるのってどれ?」
ラボに合ってるの・・・?TOCは燃焼酸化と湿式酸化方式よな、US-EPAはUV湿式とかだっけ・・・?でも燃焼酸化方式の方がメンテとか試薬が少ないからここには良いんじゃないのか・・・。あーこれは即答無理。ペンディング。(注2)

「UPSのリヤパネルのコックチェックしたいんだけど、一回GC/MS切ってもらえないかな・・・?」
せっかく真空引いているんだけど!?でもこの調子じゃ仕事進まないから今日は切ろう。GC/MSは明日やろう。

「スルファニルアミドとザルツマン試薬っていっしょ?」
違います!

「明日の採水、隣の州だけどお前も行くか?」
行きます!あ、GC/MS。

「あ、金曜日はキリロム国立公園のサンプル採取だぞ、お前も行くか?」
行きます!

・・・・なんでも日本人に聞けばすむってもんじゃないんだぞー。
でもできる限りやっていると、採水とかも、コイツは便利、と思って連れて行ってもらえる。
上にあるすべてのことは、たとえば日本ならネットであっという間にグーグル先生が答えてくれるかも知れませんが、そういう習慣はありません。なぜかって言えば、日本でグーグル先生が有能なのは日本語で何でも調べられるからです。この国ではクメール語でインターネットは答えてくれない。日本人の親切な情報発信能力は、本当にすごいんですよ、ということを、カンボジアで便利屋をやりながら再認識。

エンジニアというのが、問題を整理把握して解決法を考え対策をとり物事を良い方向に変えていける人間のことだとして、だったらとりあえず今この環境を良いものにするために、便利屋は今日も全力です。代わりといっちゃあ何だが、私の大量の質問に答えてくれるまで今日は帰さないよ。5時だからって帰さないわよ。

注1 私が乱暴なんじゃないんです、本当にそういう道具も売ってるんです。素材がカーボンとか軽量化してあるので、4メートル弱で3万円位します。
注2 今日一番困った質問。専門の方、もし見てたらどう思いますか、ご意見ください。私は燃焼酸化方式しか使ったこと無いです。触媒の交換は必要かも知れないけど、毎回のサンプルに試薬が必要と言うのは、この国では大変だと思うんだよなあ・・・というかTOC、どこにも入ってないのか?水道局には在るんじゃないか?と今気が付いた。