広大な自然の大地 (十勝じゃ無いよ)

今日こそ水汲みです。朝7時に出発するぞ、と言われ、6時半頃ホテルで寝ぼけていたら、ドアをノックする音が。同僚がもう来た!この同僚二人組みは大体待ち合わせを20分くらい巻いてくるせっかちなカンボジア人です。先に水を汲むか、朝飯を食うか、と聞かれ、水汲み!と即答。暑くなってから川でうろうろしてたら倒れてしまう。ホテルの前の川(第一採水ポイント)に下りられる場所に車を止め、データシート、現地測定する溶存酸素とpHの機器、採水器とボトル、蒸留水など抱えて川辺へ。日本でなら河川水は橋の上から河川中央で取るものとなるが、ここではまず橋に歩道は無い(危険)。雨季と乾季で水位の変化が大きいから橋の高さがやたら高い。結果橋から水を汲むことはかなり難しく、いっそ船を出した方が早いよ、という感じ。今回は出航をまつ船の舳先から同僚ができるだけ中央に向けて採水器を投げる、と言う手法。

周りの岸を見渡せば、そこに立つ家々からは水色のパイプが川に向かって伸びている。あれはおそらくグレイウォーター(注1)が家から川に直接入っている、と言うことなんだろう。同僚の持つ採水用データシートには西暦と日本人の名前が入っていた。きっと環境省に滞在していた協力隊の方の仕事だろう、過不足なく完璧な項目のきれいに整理されたデータシート、几帳面な作業をされる方だったんだろうことがわかる。同僚の採水方法も確かなものだ。ずっと、少しづつ積み重ねられているものがあるんだろう。唯一残念なのは、データシートに項目があるだけは機器がそろっていないことだ・・・。

採水を終えて、朝ごはんを市場で食べる。次はコンポンチャムの州境に近いところということで、昨日来た道を戻る。コンポンチャムに入ったぞ、と同僚が教えてくれ見渡すと、コンポンチャムは、広大な自然の大地!自然と言うか、まあ人のなす技なんだけど、うわー、すごい広ーい。なんだそのアホな感想は、と言われそうですが、あれです、北海道とかの広大な農業地帯の風景、それを見たときと同じ感想です。コンポンチャムは農業の州なんですね(カンボジアの田舎はどこもそうか)。水田もかなりの広さで広がっていたのですが、そのあと畑の種類が変わるたび、あれは芋、あれはとうきび、あれはゴム、あれはかぼちゃ、と同僚が教えてくれる。同僚が言うには、コンポンチャムの灌漑システムは日本の援助で整備されたもので、その後の農業は水田も畑も状態が格段に良くなったのだそうです(注2)。そもそもあった湖から周辺の農地に水を引くための灌漑の仕組みは、もとはポルポトレジュームだったんだ、計画は良かったけど結果がだめだよね、との同僚談。

2つ目の採水地点に到着し、ここも小さな川だけど近くの橋はやっぱり車の通行も怖い。ここで水汲んでたら轢かれるね。少し上流に上がったところ、いつもの採水ポイントに降りようとしたら、ご近所さんが洗濯の真っ最中だった。同僚が顔を見合わせ、これでは水は汲めないな、とさらに上流に採水ポイントを探しに行く。川岸に降りられる、船が泊まっている、をポイントに場所を探し出し、また同様に採水器を投げる。さらに100メートル上流ではまた洗濯をしているか、なべを洗っているかも知れないが、しかたない、それがこの川の現状なのだ。
同僚が言うには、この川の水は周辺の住民のすべてだという。生活用水に、飲料水にも使う。どう見ても赤茶色、ミルクティー色のこの水を使うために、市場ではアルミニウムサルフェート(注3)が1kg1ドル程度で売られているのだとか。上流で、木がだいぶ切られてしまってね、この川の水は最近一年中、雨季も乾季もこの状態なんだよ、とのことだった。向かいの岸では派手なエンジン音とともに機械が動いて、川底の土砂をくみ上げそれを建設現場の傾斜面に流し水だけを川に戻すと言う大胆な方法で採泥が行われている。現場で砂を使いたいんだろう。

コンポンチャム州都はコンポントムよりずっと都会、道もきれいでプロビンスホール(city hallは市役所で、州だとなんと呼ぶの・・・?日本語を知らない:画像)もすごく立派!ここでも次回からのサンプル採取をお願いし、今日のサンプルは最後のポイント、メコン川で。コンポンチャムのメコン川にはきずな橋(画像)と呼ばれる橋が架かっています。お察しのとおり、日本が架けた橋です。本当に、同僚も、どこに行っても人が親切なのは、先の協力隊のひと然り、私より先にいたいろんな誰かが、日本人の印象を良くする何かをしてくれているからなんだと思う。

もりだくさんの1泊2日採水の旅でした。わたしも日本人の印象が、おっちょこちょいとかへんなやつになっても、いやなやつにならないようがんばります。と思いつつラボに戻ってきたら、21日付けの日記の状態だ。だから返事はいえーい!でがんばるよー。

注1 グレイウォーターとは洗濯やお風呂、洗い物などで出る家庭排水のことです。日本だと下水管に入っていきますね。
注2 戻ってから調べたのですがコンポンチャムの灌漑水路整備の援助を見つけられなくて、どういう事情かよくわかりませんでした。でもまあ、そこらじゅうで、あれも日本の、これも日本の、と言われるので、役に立ってる(感謝してもらってる)みたいです。
注3 硫酸アルミニウムは凝集剤です。日本でも使われてますが、分量とかどうなってるんだろう。経験則・・・?