東経104°02′、北緯11°19′

金曜日の水汲みは、キリロム山まで行くんだよ。とチーフに言われて1週間、木曜日の午後に同僚が入れ替わり立ち代り説明に来る。明日はキリロム山に行くんだぞ!朝7時半出発だぞ、7時は研究室に来いよ、水を汲んだあとはご飯食べるんだぞ、涼しいんだ、水が流れてるんだ、山の上は王様の別荘だ、カメラを忘れるな・・・わかったってば!最後の辺はあきらかに遠足前日のわくわく坊主のそれじゃないか。

さて当日、移動式実験カーにいろいろ機材を積み込んで、人も積み込んで・・・全員か、ラボ全員で行くのか。つまり今日一日ラボには誰も居ないのか。なんだその思い切り具合は。そもそもこの実験カー9人の人が乗るのか?12人乗りのバンの後ろを実験室仕様にしてあるために座席は3席(運転席+助手席2つ)しかない。お前は助手席に座っていいぞ、と言われ、乗り込むが、君らはどうするんだ、と見ていたら、実験室仕様の後部座席の床にござを敷いている。・・・ああ、乗れればいいんだろうけど、屋根もあるしいいんだろうけどすごいな。

道すがらところどころで止まって、買い込むのは水のペットボトルを箱で、缶ジュースを箱で、焼き立てパン袋いっぱい??、瓶ビールを箱で???・・・おい本当に遠足だな、これから遠足に行くんだな、この研究室は。キリロム国立公園は、プノンペンから車で2時間ほど、海の街シアヌークビル(注1)に通じる国道を走った右手にある山の中。カンボジアでは海のそばに案外山があるのです。海に向かって走っているはずなのに、風景は山に向かっていく不思議。これは余談なのでとりあえずおいておいて、今日の目的はキリロム山にある池で酸性降下物のinland sampleを取ること。王様の別荘地、その池で人為活動の無い場所となればもってこいなんだろう。雨季と乾季、2回のサンプルを採っているらしく、今回はその雨季バージョン。ゆってもまだあんまり雨降ってないけどな・・・?山の方だとまたプノンペンの気候とは違うのかも。
キリロムが近づくと、周りの風景は田舎というか農村のそれに。思いついたように同僚が、おい、おまえ土地を買えよ!ここに農園をつくろう!という。またそれかい。買いません。家も土地も買いません!というか日本人には買えないんだと何度言ったら・・・。勝手に未来を語るんじゃない。

国道から逸れ、山に向かって走ってゆくと、だんだん道が悪くなる。山道も増えてくる。カーブだって増えてくる、道自体も舗装でなくなってくる、と、さっきまで後ろでやいやい言っていた同僚たちが静かになり、さらに運転席助手席側に交代で顔を出す。・・・・これはもしかして、みんな酔っている?車酔いなの?と聞いたら、青い顔で、そうだ、カーシックだ!という。なんで車酔いするのに窓の外も見れない場所に集まってんのよ!交代するのに!といっても、もう着くから大丈夫だー、と言う。やっとのことで採水地に到着し、うおー、いい空気だー!と車のそとにばらばら飛び出していく同僚たち。そんなに車酔いがつらかったんだね・・・。採水も必死です。

手持ちのGPSによれば、採水地の標高は638メートル。ちなみにプノンペンは2メートルくらい。たいして登ってなさそうでも、すごく涼しい!こりゃ王様の保養地になるわけよ。水を汲んで、pH、EC、DO、濁度、透視度、透視度計はどこだ・・・?筒をみてないぞ?忘れたのか?測んなくていいのか?えーと、とりあえず積まれていた機械の分は全部測定をして、2時間半の行程で来た採水が、9人で来た採水が、20分で終わった。
あとは渓流の涼み小屋に行って、お昼ご飯を食べて、カードゲームをして(注3)、ハンモックに揺られて、ビールを飲んで、その後帰るんだ、とチーフから説明を受ける。・・・うん、わかったよ、これは遠足だもんね!でも思い返してみると、チーフが一生懸命全員が行ける日程を6月の期間で探していた。普段ラボで水質分析三昧のメンバーを、全員連れてキリロムに行く、というのは、採水のついでの、チーフなりの余暇、職場旅行なんだろう。

休日にはプノンペンやシアヌークビルからの避暑客でいっぱいと言うキリロム国立公園、平日だったので他に客はまばらで、涼み小屋も使い放題、なにより気候は、寒いくらいだった。カンボジアではじめての気候がそこにありました。キリロム国立公園は入場料5ドルですが、ゲートの係員が環境省マークをつけていて、つまり国立公園の管理をしているのは環境省らしい。
というわけで今回も入場料発生せず。すみません、業務ですから。あくまで業務。ごはんは鶏丸焼きに魚丸揚げにチキンスープ、空芯菜炒めでとってもおいしかったです。でも業務よ!金曜日のことだと言うのに、週があけた月曜、「おれ、カーシックで週末気持ち悪かったよ、、、」と言っていた同僚、君が昼ごはん前のギャンブルで奇声を上げていたのを知っています。あの瞬間直ってたくせに!

あ、タイトルは採水地点の緯度経度(GPSによる、秒はタイトル上省略)です。

注1 シアヌークビルは現在名称プレアシハヌーク、シアヌークビルと呼ばれる前はコンポンソムとか、まあとにかく海の街です。魚介がおいしい。海も楽しい。西洋人がはしゃいでいる。昨今開発が進んでいて私は島にかかった橋を見に行きたいです。
注2 画像、キリロムでは子供が花輪を売っていました。高地では花が取れるということなのかな?キリロムはベトナムのダラットなんかに気候が近い気がするのですが、ダラットも花が盛んに作られていた。写真撮り逃げじゃないですよ、ちゃんとお嬢さんから花輪ひとつ買いました。
注3 画像、ギャンブリングな同僚の皆さん。ルールは大貧民(大富豪)とほぼ同じだが、日本での地方ルール以上にルールの幅が広く難しい。