言葉って道具だから

長らくさぼってすみません。日本は夏休みだということで、ありがたいことに日本からカンボジアの調査に知り合いの先生がきてくれたり、初めて海外に出る学生が緊張の面持ちで訪れたり、そんな対応の中で、外作業でもともと黒かったところにさらに日焼けをして鼻の頭が赤くなったり筋肉痛になったりしていました。そして日本からの先生方が上司ときれいな英語をしゃべるのを聴くにつけ、私の英語妙な劣化をしてる?と再認識。

カンボジアの公用語はクメール語です。私はタイ語もラオス語もわらかんですが、どうやらタイ語とラオス語が似ているらしいのにその間でカンボジア語はどっちにも似てないらしい。そんで東南アジアにありがちな、発音がやたらとたくさんありその発音が難しい、というところは一緒らしい。まあ周辺諸国とクメール語の関係はともかくとして、クメール語と英語に関する話。

クメール語はその発音が大量にあってやたら難しく何がなんだかわからん(注1)一方で、文法はそんなに複雑でないようだ。というか時制が存在しないのと、性別で言葉が変化しない。ああ、いくつかの例外はあるけど、たとえば「はい(YES)」が、男性は「ばー」、女性は「ちゃー」、お坊様は「ぽー」。お坊様かわいすぎ。「ぽー」て。

話がそれました。性別による言葉の変化はともかく、時制が存在しない、つまり動詞の形が時制で変化しないで、昔のことも先のことも続いていたことも続いていくことも、それを説明する名詞なり形容詞をつければすんでしまう、というのは簡単ですね。じゃあいくらでも形容詞をつなげればいい!いや、それは雑すぎるか。ともかく、動詞は変えないで、明日のことか昨日のことか言葉を足せばよい、ということです。となると、自分の国の言語に存在しない仕組みを他の言語で使うのはとても難しいので、同僚にもそれが使える人と使えない人が居ます。さて、これを踏まえて、同僚の英語スキルによって私が話す英語がどう変化するか、というと以下のようになります。

仕事が終わって、「家にかえるよー」といいたい時。

英語が私よりずっとわかりグラマーの本も持ち歩く同僚
I'm going home

英語の単語はわかりある程度英語で会話をする同僚
I go home

英語の基本単語ほどだけがわかる同僚
go ぷてあー(家)

英語がまったく通じない同僚
くにょむ たう ぷてあー

そうかそうか、最後は英語の変化じゃなかった。でもこう変わっていきます。とくに上三つ、一番上しか合ってなくても、英語として間違っていても、通じることがプライオリティ。だから間違った英語をばんばんしゃべってしまっている。よくないとは思うけど完了形とか過去形とか使ったら通じないから。同僚に突然「go home!」と怒鳴られても、「帰れ!」と怒られてるとか思ってはいけません。彼はただ私に俺はもう帰るぜ、と言いに来ただけです。まあそもそも、私英語へたなので、グラマーとかまともにわからず、完了形とかいったって会話でほとんど使えないのですけどね、つまりネイティブの人と話をしてうまく通じる自信はまるきりないけど、とりあえずここで生活するのに必要な道具としての割り切りを英会話に持たないとだめだよな、と英語が上達しない言い訳をしています。ちゃんと勉強しないといけないんだけどなあ・・・。

とりあえず自分より英語の立派な同僚と話をして少しでもまともな英語を維持できるようにがんばりたいとは思いますが、互いに知識としての英語がふわふわなので引っ張られあい微妙な英会話が日々かわされています。誰と話すとまともな英語になるんだー(注2)!

注1 Kの音が大量に、Dの音が大量に、というのをカンボジア人に発音してもらい、似たような単語をたくさん聞いて、「同じ音にしか聞こえないよ!」とぶちきれています。実際には違う音に聞こえるけど同じ音にしか発音できない、というのが正しい。
注2 職場でも上層部はきれいな英語を話すので、偉い人と話すとよいのですがえらい人はとても忙しいです。でも偉い人と話すときは英語も緊張して話すので勉強にはなるな。ちなみに上記の例はあくまで例です。ここまでかんたんな文章なら同僚には全員英語で通じる。まあgo home!はみんな使うけど。
注3 クメール語ってこんな文字。かわいいです。写真はうちのラボの看板です。クメール化英語の特徴として、まず、時制を気にせず話すようになる、同じ意味の単語は簡単なものを選んで使う、英語の文章にクメール語が混じる(I want to go to market、を意識せず I want to go to phsar(市場を意味するクメール語)と言ってしまう)という風に染まっていくそうです。恐ろしい・・・。