プリンターの進化

世界中で一番高い液体であるところのインクジェットプリンターのインクに悩まされています。世界中で一番高い液体ってどうよ。そりゃあめちゃくちゃ高価な酒とかに比べれば安いのかもしれないが、聞くところによるとインクジェットプリンターのインクは人間の血液より高いというよ?そしてもちろんこの国でも高いの。日本とほぼ同じ値段するの。そしてそのインクを自腹で買うの。学校で配分される研究費で買っていたときにそのありがたみをわかってなくてごめんなさい。でもこのプリンターさん、おなかすいた!もうインク無い!っていうの早すぎだとおもうの。よくわからんタイミングでテストプリントしたがるのも多すぎると思うの。なんだ、君はしょっちゅう身長測りたがる成長期の子供かなんかか!テストプリント勝手にしたって進化しないわよ!プリンターの機能に対し安く売っているからインクが高いというメーカーの戦略や努力もわかるけど、低機能で本体高価格でもいいからサイクルコストを安くしたいと思う人はたくさんいるはず。その選択肢を何とか作ってはくれないのか。

ということをぐちぐち言っていても、一個のカートリッジでは200枚しか印刷できない、それ40人クラスに5ページプリント配ったら終わっちゃうじゃん、一回で!という状況は変らないので(注1)、この国には何か秘密があるはずだ、と同僚に相談。なんかあるだろ、インクをやすく済ませる方法が、教えなさいよ!すると同僚が大容量外付けカートリッジという名のタンク、があるという。・・・改造だな。それはメーカーの保守を外れますが自己責任で、という改造だな!そもそもここにメーカーの保守はないし改造なんかいくらでもするよ!と、同僚にメーカーと機種を伝え、改造できるか調べてきてもらう。

翌日、同僚が「おまえのプリンターも改造できるぞ、今日持って行くか?」と教えに来てくれた。行く!行きます。改造します。同僚のバイクの後ろにプリンターを担いで乗り、揺られることしばらく、同僚のバイクはカブなので、前にPCを修理に持って行ったときもやったんだけど、暑いし重いし狭いしくらくらするし気を抜くと落ちそうだしとっても危険。必死でバランスをとりながらPC屋に到着。ついた瞬間にすごい雨が降ってきた。同僚は、俺たちラッキーだな!と喜んでいるがそんな余裕は私にない。

しばらく店員と話していた同僚が渋い顔で、「インクタンクの予備がないから一週間かかるってよ」という。いいけど一週間かかっても、と思ったが同僚はそんなに待てないらしく(注2)、雨もやんだのでほかの店を探すという。私はまたプリンターを抱えてプノンペンをさまようのか・・・言われるまま後ろに乗りまたしばらく走り、それらしい店を発見、同僚が聞くとできるという。おまえラッキーだな!と喜んでいるがやはりそんな余裕は私にない。
見回すとこの店はプリンター改造の専門店だ・・・。私のメーカーのものははじめからの外付けタンクはないのだが、お兄さんが元々使っていたインクにさくさっくと穴をあけチューブをつなぎどかんとタンクを壁面に貼り付けた。・・・すごいな、すごい改造だな。なんとまあ簡単だな。他社のものでははじめからICのついているインクカートリッジにタンクが接続してある仕様のものがすでにあり、新品をその場で改造し買ってゆく人もいるという。いや、実際気持ちはわかるぜ・・・。この改造でインクの値段が15倍から20倍はちがうんだもの。

メーカーの保証からはすっぱり外れるし、そもそもの開発の苦労や、高機能化したプリンターを安く売ってインクで稼ぐ、という仕組みもわからないでもないので、この改造を進めると言うことでは一切ありませんが、一方で国や地域の事情によってはその値段設定をされてもインクは買えない、というのも事実(注3)。郷に入っては郷に・・・というのは言い訳ですが、私の作業は楽になりました。インクを買いに行く手間は省けるし、買いに行ったPCショップで今そのインク切れてしまっていて、といわれることもない。外付けタンクは透明だから残量は一目瞭然だし、プリンタにしょっちゅう、おなかすいた!とピーピー言われることもない。

ありがとう!手がインクだらけでインクを扱う仕事をしているのに真っ白のシャツを着ていたエンジニアのお兄さん!私にはその度胸はないな−。そしてごめんなさいメーカーの開発の人!ここにいる間はこれ使わせて。

注1 こっちで別に一クラス分プリント印刷することないですけどね。でも、英語の文章のほうが印刷して読まないと本当にわからないんだもの。日本語ならまだ抜き出してノートに書くもするんだけど、英語の文章は印刷しないとだめだー。学校で好き放題印刷してたんだなあ・・・。
注2 カンボジア人はのんびりなんだかせっかちなんだかわからない。でもこの同僚は結構せっかちだとおもう。とくに今回は自分もプリンターの改造過程をしらなかったので見てみたかったらしい。自分の好奇心か。
注3 私は外国人なので日本と同じ値段と思えば買えるんですけどね、ですけどね、折角だからやってみたいじゃないか。それにこのプリンター、私が帰るときにこのまま置いていった場合に、このままではこちらの人使わなくなるんじゃないのかなー、と思ったり。