ワットプノムのミュージアムとコウモリ

プノンペンは観光の町じゃないのでプノンペンに来た観光客は見て回るったってどこへ?となり、とりあえず行くのはたぶん王宮(シルバーパゴダ)とワットプノム、セントラルマーケット、あとはツールスレンくらいではなかろうか。ワットプノムはプノンペンの北の方、小さな円形の丘の上に白い綺麗なストゥーパ(仏教建築物・供養塔)が立っている。かなり大きなものなので、遠くからでも結構目立つ。カンボジア語で「ワット」はアンコールワットなんかもそうだけど「寺院」のこと。「プノム(プノン)」は「山、丘」という意味なので「ワットプノム」は「丘の寺院」まんまです。このプノムはプノンペンのプノム(プノン)と同じで、そもそもプノンペンという都市名の語源になっているのは、このワットプノンをたてたペン婦人(グランドマザーと呼ばれる)、ペン婦人の丘、という意味でプノンペン、です。

説明がめんどくさくなりましたが、紹介したいのは、ワットプノムではなくその中にある美術館です。ワットプノムは寺院ですが、ストゥーパを見に観光客は来ると思いますが、実は敷地の中にちっこい美術館があるんですよ。案外みんな知らないか、知っててもわざわざ入らないらしいのですが、だからか、この美術館はいつもびっくりするくらいがらがらにすいています。大型バスでワットプノムにやってくる観光客も、ワットプノム自体への入場券(注1)を配られ寺院とストゥーパを見ますが、美術館はどうやら観光ルートではないらしい。この美術館、外国人は1ドルの入場料がかかりますが、こちらにしては珍しく、カンボジア人も2000リエル(0.5ドル)の入場料がかかります。だからカンボジア人もあんまりいない。そんな事情で美術館はいつもすいている。

でもこの美術館、人が少ないからか説明も少ないのだが、なかなかおもしろい。ちゃんとした美術品だろう絵の隣に、外国で行われたらしいクメール美術展のポスターがなぜか飾られていたり、たしかにB級なにおいが少ししないでもないが、美術館と言うよりは博物館に近い。昔のカンボジアの暮らしやアンコール王朝時代の寺院建設風景、14世紀にはじまったプノンペンの変遷が18世紀にはどんなだったか、フランスコロニアル時代にはこんな風景、といったぐあいにすべて粘土細工の人形と背景でジオラマのように展示されているのだ。アンコール王朝の時代の寺院建設現場、象に乗った王の列、寺院での学校、シクロ、ルモー(注2)、自動車、市場で売られている野菜、布、ミニチュアで再現されていてとってもかわいい。細かく見れば見るほどおもしろい。
わたしはこの模型みたいなもののほうが好きだけど、絵心のある人が見ればもちろん展示の絵画が楽しいだろうとおもうし、2階建てなのだが2階の1区画は近世の歴史をやはりジオラマや絵、写真で説明した場所になっていて、ポルポトレジュームについて、ツールスレンとキリングフィールドについて、プノンペン解放から1993年まで、その後現在まで、という具合に盛りだくさんなのだ。

わざわざ観光でプノンペンに来る人はいないのかもしれませんが、飛行機の都合の一日の滞在なんかではワットプノンの小さな美術館、おすすめです。受付のお兄さんお姉さんはとても暇そうでのんびりですが、帰り際にはカンボジア人特有のはにかみ笑顔で「ありがとう」を言ってくれます。そう、最後に忘れちゃいけないのがコウモリ。ワットプノンの横にある大きな木ですが、こちら、コウモリの巣になっています。昼間行くと果物がなっているかのように巨大コウモリがなっています。うわあー。すごくでかい。飛ぶと1メートル近くあるという噂も聞く。うわあー。寺院と美術館と野生(?)動物、そこそこの観光ルートでしょ。

注1 ワットプノムの敷地への入場券があります。外国人1ドル。カンボジア人はないので、地元の子どもたちや物売り、学校の終わった高校生などの遊び場になっている。
注2 ルモーはトゥクトゥクのような乗り物。トゥクトゥクのことをルモーと言う人もいるし、自転車でトゥクトゥクの人が乗ってる部分(という説明がカンボジアでしか通じないんだな、カンボジアのトゥクトゥクはバイクと座席の合体型)をひいている乗り物のことを指す場合もある。
注3 画像は美術館入り口とパンフレット(ちゃんとある)、あとコウモリ。けっきょくコウモリに引っ張られすぎ。だって印象が強烈なんだものー。