一日が○○時間だったらなあ・・・という

大学で卒業研究をしていた頃からずっと、同輩とはそんな話を繰り返しているような気がする。「一日が24時間じゃなくてもう少し長ければなあ・・・」という意味だ。大学院生の頃にもまた時間がたりなくて、ただ体力はあったので「一日が48時間だったらだいぶ助かるよな、実験とか!」という話を良くした。そんな話をした友人から(日本で同種の職に就いている)、「一日が36時間だったらいいよなあ・・・」というメールが届く。

大学時代より縮んでるぞ、と思い読み進めると、「最近はだめだ、48時間だったらたぶん体が持たない。でも24時間じゃやっぱり足りない。36時間だったらなあ・・・」という実現不可能な希望的観測が語られていた。君変わってねーなー。つうか仕事しすぎだ、休め。

休めとか言ってるが、私は私で48時間だったらなあ・・・と毎日思っている。それは前回の記事にもあったように、電力事情に関係する。そもそも環境省に設置のこの装置は、毎日電源を落とすようには出来ていないし、連続測定も数十時間スパンで出来るように作られている。そんな機械を電力事情によって毎朝起動し、毎夜停止しているのだからもったいないことこの上ない。効率はとても悪いし、真空の起動停止をするたびにトラブルは必ず起こるし(そしてトラブル解決にはだいたい一日必要)何より装置の精度が、その確認がとっても大変なのだ。

化学分析で物質の量を測る、と言うときには、あらかじめ濃度のわかっているものを測り、それを物差しにするようにして未知の試料の濃度を算出する。そのとき「既知の濃度の物質を測って物差しを作ること」を「検量線をひく」という。この検量線を引く作業は、1度測って、はい、できた、という訳にはいかない。検量線を引き、物差しを作るのと同時に、既知の濃度の物質を繰り返し測定して、その再現性を精度として算出し、その装置と方法で測ることの出来る最低ラインを決めなければいけないのだ。装置で測ることの出来るギリギリの濃度はどのくらい?ということを示すこの値を「検出下界」あるいはその装置で測った時に正しく算出に使えるギリギリの量はどのくらい?をしめす値を「定量限界」として、分析した値の信頼性を保証する。

とまあ難しげに書いたけど、ぶっちゃけると言いたいのは「物差し作るには同じ試料をいっぱいいっぱい測る」と言うことなんです。そしてその一回の測定に30分から40分がかかる、と言うことなんです。よし計算してみよう、検量線を作るのに5段階の濃度のわかっている試料を5回以上測定する、てことは5×5で最低25回だ。一回の測定に40分かかるとして測定だけで16時間超。装置の起動と停止にそれぞれ2時間と3時間。

・・・無理なんだよね!朝起動して夕方停止してたら物理的に無理。苦肉の策で毎日の測定の再現性など出してみるけどこれもやっぱりつらい。そりゃ連続運転してなきゃ調子も変わるさ。日本では装置が1度動き始めたら、私が家に帰ろうが風呂に入ってようがご飯を食べていようが晩酌をしていようがとにかく装置は動き続けてくれる。夜通し分析を続けてくれる。次の日の朝には分析データを出していてくれる。なんていい子だったんだあの装置は・・・私の試料は夜通し測定をしたものですが分析装置が動いている間は私の残業にカウントされますか?されませんね、すみません。そもそも残業代って無いですね、知ってます。

まあ、そんなわけで一日が48時間であることを所望していますがそれは無理なので今度は環境省の分析室で合宿!計画を立てています。これを1度やらないと、検出限界出せない。まあやったところで、夜中に停電が起こってしまえば結局そこで装置は止めるのだが、うん、つまり止めるための人を分析室においておかなければならないと言うことです。これは非常時対応職員てことだな。そしてこの国ではちょっと非常時が多いってだけだな。何となく納得いったところでこれだけ愚痴を書けばすっきりするのでがんばります。あ、そうだ、今日の記事は愚痴です!大々的に愚痴ってすみません!

注1 今日の画像(上)は私が最近測定した物差し用の試料、0.1ppmと0.2ppmのデータです。0.1ppmというのは1Lの水の中に0.0001gの物質が入っている位の濃度のこと。プロが見たらわかる、4本目、フルオレン・・・どうなの?とかは突っ込まない方向でお願いします。このメッセージをとくに前述の同輩へ。画像下は検量線。右斜め上にピシーッとまっすぐ引かれているのが良い検量線です。だからこの検量線は良い検量線。ちょっとレンジはデカいけど良い検量線。やっとやっとこのくらいが出来るようになりました。