鍋がないなら作ればいいじゃない

しょっちゅういろんなものが実験で必要になるんだけれど、今日必要になったのは寸胴鍋。パスタをゆでるような細長い鍋だ。蒸留に使っていた装置の加熱部分の状態がベストコンディションでは無いんじゃないか、との指摘を受け、そうか、もうちょっと考えないといかんのか、と加温方法を考えた結果、電磁調理器と鍋、と言う結論にたどり着いた。この装置ではガスが使えないのでカセットコンロはだめだ、だから最近街でも見かける電磁調理器で(注1)。鍋は縦に長くないと使えないのでパスタ鍋のようなものを。同僚に相談すると、電磁調理器はヒータが配置してあって直接加温できるものがある、と引っ張り出してくれた。じゃあ鍋だな、と休日鍋を見に行く。

カンボジアではプラスチックのバケツやアルミの鍋などは市場でもいくらでも手に入るのだが、スチールのものが難しい。スチールはゼブラブランドとか専門の店に行かないとだめなのだ。で、行ってみてわかる、パスタ鍋がいくら縦長とはいっても、そんなに細長い訳がない。でも私がほしがっているのは20センチ直径30センチ高さ、という細長さ。これは実際に考えるとかなり細長いのだ。鍋ではとても見つからない、と思っていたら、金属製のバケツがあった!このバケツいけるかも、採水にもプラより金属製がいいし、と25センチ直径32センチ高さの小学校のぞうきんがけバケツみたいなバケツをとりあえず買ってみる。

翌日電熱器で試すも、バケツの底(なんというのか、茶碗の糸じりのような部分)が高すぎで加温は難しいことが判明。自分で買ったくせに、出来ないよ!と同僚に文句を言ったら、いや、作れよ、と言われる。作る・・・?鍋作れるの?と聞くと、もちろん作れるさ!と。すごい!カンボジアすごい。日本じゃ簡単じゃないよ。バイクを走らせ・・・これは何屋なの?日本にはない(少なくとも私の身近に)ので名前がわからん。板金屋か?このお店で作っているのは、肉まんをふかしたり、トウモロコシを蒸したり、屋台でいろいろやるときの部品だ。煙突っぽいのとか、じょうろっぽいのも。ここでオーダーすればおまえのほしいサイズの鍋ができるさ、と言われる。

職人のオヤジにこんなやつ!と説明して、素材は何がいいんだ、と言われる。アルミとか真鍮とかステンとかか。アルミとステンでは倍値段が違うらしいが、現状で使う予定なのは直接あっつくなるタイプの電熱線配置のものだが、もし電熱器がうまくいかなくて電磁調理器(IHヒータ)を使うことにしたらアルミでは使えないな・・・そもそも加温部の温度調節には電熱器よりIHヒータがいいかもしれない。保温の温度とか唐揚げの温度とか選べるってことでしょ?いや、化学実験ですが。重たくなるけどステンにしようか?というと同僚はup to you!だ。よし、ここをケチってもしょうが無いよ、ステンで作ろう!とオヤジにオーダー。店では若者が手動でなにか円い筒をたくさん作っていた。これはなんの部品なんだろう・・・?

オーダーから半日、翌日午前中にはあっという間に鍋ができた!鍋って言うか実験道具です。オーダーメイドの実験道具。かわいい!すごいかわいい!ナイス鍋。余りうれしくてとりあえずかぶってみました。バカです。そのまま喋ったら鍋の中で声がワンワンしてやばかった。本当にバカです。えー、私のバカ話は良いとして、ほんとうに、この国には何でもあるしなんでも作れる。何でも買える。沸石はないけど。そればしょうがないけど。でも、沸石代わりも作れる。日本で便利な実験をしていたけど、いろんな工夫をしながら、このかわりにはこれでもいいよ、とか、あれの代わりにこれも使えるよ、と言う知恵を聞くたび、日本でもちょっと前までそういう工夫、いっぱいしてきているんだろうな、と思った。

注1 最近の流行らしい電磁調理器は、イベント会場やスーパーの店頭などで実演販売をしていたりする。湯をわかすスピードをみせる、とかはわかるんだけど、電磁調理器に直接卵を落とすとかべーコンを乗っけるという実演販売はどうなんだ・・・。それに電磁調理器は停電だと使えないからね!←鍋を注文に行った日は、あさ10時半から夕方まで停電でした。職場で仕事が出来ずに鍋を注文に出た。停電、根に持っている。