魅惑の調味料

先に朝食について書いたとき、そもそも私はカンボジアのレストランに常備の調味料について書きたかったんだ、と書き終わってから気がついたのですが、今日はその調味料の話。カンボジアにはカンボジア独自のものと、近隣諸国から入ってきているものと、それから世界中どこにでもあるようなものと、まあ当然いろんな調味料があります。

レストランに常備の調味料、というのは、日本でだとたとえば学食とか、社員食堂とか街の定食屋とかに、塩、醤油、こしょう、ソースなんかが一緒になってトレイに乗っかっているイメージ。これと同じ感じで、はじめから4つとか固まった調味料入れがテーブルにのっていたりする。画像のものがそれですが、これがなくても、醤油(カンボジア醤油)とチリソースくらいは大概のレストランや屋台においてあります。ほかには、小皿が出てきて、小口切りのチリとスライスニンニクが添えられているのが常。カンボジアのご飯はタイほど辛くない、ベトナムほどくさくない、なかなか穏やかで懐の広い味をしており、味付けもかなり自分好みに好きにやってー、と言うスタンス。小皿に醤油を出し、好きなだけチリやニンニクを加え、注文したおかずの味を好きに変えながら食べる。あ、レストランには調味料のほかに、自家製の漬け物がおいてあるおみせもあり、これも何かとうまい(注1)。

さて画像に戻り、このレストランにあったのは、醤油のボトルのほか、まずカンボジア人が絶対外せない、砂糖(注2)。砂糖はいろんな料理にたっぷり。飲み物だけじゃないんですよ、こっちの人は米の麺の汁そばにだって砂糖いれるんですよ。それも音がしそうにざーっといれるんですよ。おい、具合悪くなるぞ。それから唐辛子味噌。発酵している風のものから生の唐辛子をペーストにした風のものまで様々。だいたい塩を加えてすこし発酵した状態になっている気がする。あとこれにもすでに砂糖は入っている気がする。それから漬け物と、最後の一つ(右下)が私の大好きな調味料、シエン。

このシエンという調味料は「大豆が粒のまま入った発酵醤油、納豆風味」です。全体には醤油のようにさらっとしていて、そこに形のしっかりした柔らかい豆が入ってるんだけど、これが発酵調味料なので味はつまり納豆にちかい。ねばねばがないだけで、洗って醤油につけた納豆の味だ!いや、納豆を洗って醤油につけてみたことはないが。もし日本でシエンが食べたくなったら、納豆を洗って醤油につければ出来そうだな、と言う話。

このシエンは、たとえばボボーと呼ばれるおかゆの味付けに食べるときに加えたり、あるいは調味料として肉野菜炒めの味付けにしたり、ゆで野菜と和えてみたり、串揚げのつけだれにしたり、上げ魚に野菜とシエンで作ったたれをかけたりまあ、とにかく万能だ。そんで日本人は間違いなく大好きな味だ。納豆が嫌いな人でも、においが強いわけでもないしどっちかというと醤油に近いのでハードルは低いかもしれない。こんな食べ方はカンボジア人はしないだろうが、日本人なのでシエンだけでもご飯が食べられる。シエンと卵の炒め物なんてすばらしい。

えー、全力でシエン愛を語ってみたので、カンボジアに来る予定のある人は是非試してください、シエン。市場でも好みのシエン(味も甘めとか辛めとかある)1カップいくらって感じで買えます。しかも1カップ十数円です。ただし日本に持ち帰れるかは知らない。

注1 画像上に写っているのではニンニクとちび青唐辛子の醤油漬けがありますが、これはものすごくうまかった!朝食だったのにばくばく食べた。ますますニンニクくさい。いきなりのシエン愛からの浮気。ニンニクくさいのも納豆くさいのも似たようなもんか。画像中は私がいちばんうまいと思っているおかゆ屋のおかゆ。下はその店のシエン。挽き割りタイプのシエン。
注2 塩、砂糖、胡椒など基本の調味料でも美味しいものあります、カンボジア砂糖の椰子砂糖とかカンポットの胡椒は言うまでも無く有名だし、塩はケップ(カンポットの隣、海沿いの街)で作られているものが売っている。ケップの塩は市場で買いますが、ざらざらしっとりしている。これとカンポット胡椒でカンボジア豚を食べると至福。