ポンプポンプポンプ

朝から研究室では大気採取用の装置の設置。2つの装置が並べられ、ぶおーーんと言う音を立てながら動いている。なんで?なんでラボの中で動かしているの?室内空気のサンプリングというわけでもあるまい、これはPM10(注1)の採取用装置だ。誰もいなかったので、なんで?を思いながらしばらく眺めていると、装置が不思議な音を出している。吸引の音の途中に、なんか突然詰まったような音がしたり、低くなったり高くなったり。モーターの音が変わる。・・・なんか調子悪いんじゃないの・・?と思いまだしばらく眺めていると、エンジニア師匠が。何でこれ動かしてんの?ああ、調子悪いんだよ、流量が一定になったりならなかったりするもんでうまく動かないからいま確認運転してんの。

そうかー、そりゃ大気のサンプリングをする装置で流量が安定しないのは致命的だよね。こっちもかー、というのも、うちにもうまくいかないポンプが一ついる。GCMSの真空排気用ポンプ、がんばってくれているけど、起動当初は静かなのにしばらく動かしているとなんかいやな音がし始める。水を噛んでいるような、規則正しいいやな音。そのまま使えているので使っているけど、どうしたもんかねえ・・・騒音が小さいのが売りのはずのポンプ、明らかに売りが無くなってしまってるじゃないか。しばらく動くと騒音が始まる、というのも、どういう事情かわからない。

ポンプ、特に乾燥真空ポンプのたぐいは水が大敵だと思うのだけど、カンボジアは確かに暑いけど、しかも今は雨季だけど、皆さんが想像するほど蒸し暑くはない。だからそんなに湿度は高くなく、ポンプの稼働にシビアな環境とも思っていなかった。でもそれはプノンペンが大きな川に接した街で、常に風があるからで、実は結構湿度はある状態でポンプにはつらいのかな?と思ったりもする。動いていてくれる間はいいけど、こちらで出来るメンテも、ポンプはオイルを交換する程度。ほかにはどうにもやりようがないのだ。しかも私はいま、調子悪いよ!と訴えているかもしれないポンプをそのまま動かし続けるという極悪ぶり。だってしょうがないんだよ、働いてくれー。

先にも何度も書いているが、こちらでの日本製品信仰ははすごい。理由は壊れないから、だけど、こういうことがあると、壊れない、っていうのが本当に大事だと思う。さらに、大事なのは「この国で壊れない」という事情だ。日本製品の寿命は確かにすごい。でもそれでも日本で使うのとこちらで使うのでは寿命はすごく変わる。最たるものがおそらくクルマで、日本で日本車に乗っている場合のクルマの寿命はこちらの日本車よりきっとずーっと長い。日本ではその使用環境が過酷じゃないからだ。雨季に水の中を走らないし乾季に砂埃にさらされないし道に穴が開いていることも日中40℃越えのなかを走ることもない。そんななかでも「日本の製品は比較的壊れない」こういう事情だ。つまり日本製品だってこっちでは日本より簡単に壊れるし駄目になるのは早い、でもまだマシ、と言う事。

こちらに設置される装置が、機械が、生産国で順調に動いていて問題ないものだとしても、この国でどうかはやってみなきゃわからんのです。だから日本からPCを持ち込んでも不思議なほどのスピードで壊れたりもする(注2)。いろんなものに、何とか無事動き続けてくれよ!って拝み倒しながら、今日も分析は続く。ところでポンプの異音、なんとかならんかね?

注1 大気中に浮遊する微小粒子のサンプリングをする装置です。PM2.5 とか PM10とか粒子径によって呼ばれます。
注2 同じく途上国で調査をしていた先生などからの情報ですが、同じものを2つ購入してクロスチェックをしようとそろえた機器でもその付属PCでさえも寿命が非常に短いそうな。電力の供給事情や、そもそもアースでゼロが取れていないんだよ、というのも一因のようです(電子機器への影響)。