俺がやる

カンボジアには全部でいっぱいいっぱいの省庁があるそうな。・・・・すみません!数えようかと思ったんだけど同僚に聞いたら数えたことないよ、とか24?25くらいかな?とか、政府のウエブサイトに全部リンク貼ってあるから数えれば?とか言われたのでクメール語ヤダヨ、ってなって数えませんでした。とにかくいっぱい。わたしがいるカンボジア環境省はその一つ。日本では今ほとんどが独立行政法人化されているが、省庁に関連した研究機関というのが昔はたくさんあった(正確には今もたくさんあるけど独法になっているので省庁付きってことではないんだとおもう)。たとえは国土交通省なら土研、国総研、環境省なら国立環境研究所、文科省なら理化学研究所、経産省なら産業技術総合研究所、農水省なら・・・農水省は研究所がたくさんありすぎて一大研究団地が形成されているのでどれと言う話でもないか。先の例も別に省庁に一つづつの研究所、と言うわけでもないが。

ええと、何が書きたいんだかわからなくなってきた、そう、カンボジアにはたくさん省庁がありますが、日本のようにはそのそれぞれの省庁は研究所をもってはいません、と書きたかったんです。つまり、環境省に直轄の環境研究所、てきななにかがあるわけでなく、カンボジアの環境調査などは環境省の中の一つの課の一研究室が行っているわけです。それが私の所属する研究室(分析室)。

研究室にはチーフがいて分析員がいて、と言う構成なので、日本の研究所の例に沿ってみれば、チーフが研究室長、分析担当の同僚たちは上席研究員とか主任研究員いったところか。ただお察しの通り、規模はとても小さいわけです。それぞれの人の役割もまあいろいろ。通常分析もやるけど呼び出されてゆけば何でもする。たとえば外国企業、なんか商品の説明をとあるホテルでするから話のわかるやつを出せ、というお達しが来れば、分析室からだろうがなんだろうが、この手の装置に明るいやつ、とか、この分析に関係しそうな人で英語がわかるやつ、とか、とにかく何でもみんなやる。
私の所属する課のトップは、省内に数名配置されているディレクター、日本でだとどうなるんだ、環境省○○課の課長ということか、その方になりますが、上記のような事情なので、このトップが突然実働に加わっていることがある。

ある日のラボはとてもガソリンくさかった。何でこんなに室内にガソリンのにおいが充満しているのよ!こっちは分析するのに室内大気環境が悪いよ!とぷんすかしながら装置の部屋から出て行ったら、研究室に比較的大きめのジェネレータ。その起動のひもをディレクターがわっしわっし引っ張っている。・・・なんで?何で室内で何でジェネレータの起動をディレクターがやっているの?とまあいろいろ突っ込みどころ満載なのだが、聞くとこのジェネレータは、環境省の移動分析カー(注2)に積んで地方部に行った先で分析をする(あるいは試料採取をする、先の大気補修装置を動かすとか)ときに使いたいもので、導入された時にすでにうまく動かなくて、修理に出したはずなのにやっぱり今うまく動かないわけ、という。で、それをラボの同僚が上司に報告したら、上司が「わかった俺がやる」と研究室まで出かけてきたそうな。

この上司、朝は早くから夜まですごく長い時間働いている。いろんなミーティングで海外に出かけることも多いのに、一方で試薬や消耗品の発注、壊れた装置の修理依頼のメール対応やサービスセンターとのやりとりまで全部やる。試薬の発注などはカンボジアの代理店を通せないものは海外のメーカに直接発注までする。つまり現場から統括までぜんぶやる。俺がやる。その結果話が本当に伝わりやすい。何が起こっているのか、すぐにわかってくれるし、説明は最小限で済む。うまくいかない、を報告したときに、何でだよ!と怒るだけでなくて自分で確認にきて、やっぱりうまくいかないね、をわかってくれるので、報告が怖くない(注1)。

課長はたいへんかもしれないが、偉くなっても現場に手を出してくれるのはいいよな、とおもう。現場の言っていることはわかる、でも俺がやる、俺もやる。わたしも俺がやる精神を前面に押し出してゆこう。ま、今の仕事じゃ偉くなる予定もないけどね!

注1 ちょっと嘘つきました、報告はこわい、怖いけど理不尽ではない。でもまえにUPS騒動の時に、わたしと師匠の前では問題ばかり起こしているUPSが、課長が見に来たら突然直った、とかがあって2人で首をかしげたことがある。なんで?あるよね、そういうこと。わたしも学生に、先生動かないから見に来て!と言われ、行ったらなんの問題もおこらず、「さっきまでは本当に壊れていたんです!」を主張されたことがある。いや、疑ってないから。
注2 画像はジェネレータとジェネレータを積む「復活の」移動ラボカー。なぜ復活かは内緒です・・・。でもちゃんと元通りに直ったよー!