帰国という気持ち

ベトナムからカンボジアに戻りました。

出発当日までばたばたし、一緒に行く同僚は当日朝まで職場に書類など出しに行き、その際「あいつは今日来ないのか、俺は聞きたいことがあるんだ!」と言っていたというチーフの情報などもらってぎりぎり感すごいな、と思いながらもどうにか出発。経由はホーチミンで、ホーチミンまでは本当にあっという間、40分ほどのフライト。ホーチミン国際空港(タンソニャット空港)から国内線のターミナルに移動しハノイ、ノイバイ空港へ。ベトナムの入国はイミグレ−ションのカードも税の申告の紙もなんもなく、実にあっけない。が、そのあと国内線のターミナルに移動するのか、暑い中めんどくさいよ!とぶつくさ言いながらはたと思う。日本なんか国際線と国内線の移動に成田と羽田移動しろなんていう横暴をやっているじゃないか。タンソニャット空港に両方のターミナルがあって歩いて10分で1度ですんじゃうベトナムすごいよ。文句言ってごめんなさいだよ。でもノイバイ空港も国際空港なんだからプノンペンハノイの直行便を作ってくれよ(まだ文句言ってる)。
そんなこんなでとりあえずハノイに、学会会場のホテルに到着。ノイバイ空港はハノイ市内までがものすごい遠いんだね・・・と思ったけど日本の空港さほど変わらないか。交通費のやたら高い日本のほうがよっぽど大変か。ノイバイ空港からハノイ市街まで、タクシーで高速使って1時間走ってドライバーにチップ渡したって15ドル程度だもんなあ。

学会のことはここで細かく触れませんが、同僚は準備不足と研究内容の薄さを質疑応答時のキャラクターと会話内容で何となくカバー、という無理矢理な技を見せてくれました。さすが、職業オフィサー。
ハノイの街は建物の雰囲気はフランス、コロニアル時代の名残かプノンペンのそれと似た雰囲気もあるのだが、なんというか、狭い。街が、路地が、ぎゅうっとなっている感じで、凝集と混沌を感じる。建物も大通りも広いと思うのに、何でなんだろうなあ・・・建物の高さが高いのか?ごしゃごしゃした雰囲気も、悪くないし(注1)、長くいられるなら、ベトナムで比べるとたぶんホーチミンよりハノイの方が好きかもしれないな、と思った。にしても今までに訪れたベトナムの数都市のなかでダントツの五月蠅さだった。人によってはホーチミンの方がうるさい、というかもしれないが、ハノイの旧市街の混雑とクラクション、車とシクロとバイクの波は尋常でない。カンボジアではバイクは「俺はここにいるぜ!」を主張するためにクラクションを鳴らすが、車はほとんどクラクションを鳴らさない。ベトナムでは車がすごい勢いでクラクションを何度もならすので、その音は当然バイクのそれより大きく、びくっとなる。中にはリズムを付けてぷっぷかやってくれるのもいる。

カンボジアでも、街中でそんなに言葉かわかっているわけではないのだが、本当に全くわからないところで、その割に音は大きくノイズとして聞こえる場所では本当に落ち着かないんだな、と思った。カンボジアに戻って、プノンペンの車とバイクの排気音の中をトゥクトゥクで走りながら、感じたことが、「ああ、プノンペンは静かだな」だったのだから。本当に帰ってきた、よかったー、プノンペンだー、という気持ち。旅から家に帰ってほっとする気持ち(注2)。戻ってきたのはカンボジアだが、私の中では帰国です。何でこの国はこんなに懐かしいんだろうなあ。ただいまー。

注1 カンボジアも物資は何でもある、豊富だと思いますが、やはりそこはベトナムに行ったらそろうものが違う。店の数、売っているもの、本当に盛りだくさんで、高いものから最新のものまで何でもそろっている感じがする。一方で街の雑踏を、背負いかごで傘をかぶり野菜を売って歩くおばちゃんたちも、自転車でかご売りのお兄ちゃんもいるのだ。盛りだくさんな街だ。学会に行って実験用に器具洗浄用のブラシとかかってきました。
注2 タイ・ベトナム・カンボジアを旅したことのある人は気づくかもしれない、実はカンボジアは物価が高いのです。食べ物も日用品も派生して移動手段なども、ベトナムではカンボジアより安い。カンボジア人もそれはわかっていて、ものは高いのに給料は安いからどうにもならんのだよ、とぼやく。一方でカンボジアでは買い物でぼられることはほとんどないのです。そりゃ交渉で安くなるとか、ある程度観光客値段というものもある、運の悪い人もいるかもしれないが、ベトナムから旅をしてきた人がカンボジアの物価に驚いたとしても、それはね、ぼられてないんです。一方でベトナムのぼりぐあいはすごい。怒りを通り越して感心することもある。路地のコーヒー屋で隣と同じ注文に倍のレシートを持ってくるおばさん。空港でお土産を買おうとして、明らかに4$の値札が貼ってあるのに、2つ買ってベトナムドンで払おうとしたら420000ドン(21ドル)の請求を平気でしたおっさん。文句を言ったら4$の表示はベトナムドンだ、とさらに空気を吐くように嘘をつく。本当に親切にしてくれるベトナム人もいるのになあ、とあきれるのと同時に悲しい気分になる。でも悲しいのは私の価値観での勝手なことだ。確信犯なんだろうな、生きていくのに当然のことで、悪いなんて全く思わないんだろう。本当を求めるのが無意味な場所では、自分が折り合いが付けられるか、で生きていくしかない。私はこの国では折り合いを付けやすく、だからほっとする。