だしてーー!!

毎日職場から帰るのはだいたい5時半。大概の場合最後だが、チーフや、実験が終わらない同僚が私より遅いこともある。大概は私か、チーフが鍵を閉めて帰る。先に返るときは互いに、帰るよ、と声をかける、のはまあ普通通りだ。ただ、この声かけは普通よりずっとこの研究室では大事だ。というのも、スタッフは全員がまず入り口の鍵を持っていて、それから、それぞれが使う部屋に併せて、その部屋の鍵を持っている。なので、それぞれの部屋の鍵、戸締まりは使った人が責任を持ってやることになっている。日本でも大学などでたまにPCの盗難など問題になることがありますが、ここでも貴重な実験機材やPCなどのある部屋はとくに戸締まりに気を付ける。だから、誰が帰っていて、誰が残っていて、最後に誰が鍵をかけるんだい?というのはとても大事。俺はもう帰る、おまえまだいるんなら鍵よろしく頼むぞ、と言う意味が、さきにかえるよー、という挨拶に入っているのだ。

ついでに、入り口の鍵はカンボジアでポピュラーなガッチリ南京錠。ということは、外から締められたら、中からは開けようがない。だから、みんな帰るときに自分以外に誰も残っていないか、最後の鍵を閉めて良いか、も部屋を回りながら確認するというわけ。さて、ここまで書いて、察しの良い方はこんなことを思うかもしれません。だいたい最後まで残っていて、毎日のように鍵をかけて帰るのが日課になっている私、中に人がいるのにいつもの癖で外に出たときに鍵をかけちゃったんじゃないの・・・?そう、わたしのおっちょこちょいならそんなことをしでかしてもおかしくないね。でもこの日は違った。5時過ぎ、同僚が先に帰るよ、最後はおまえだぞ、と確認に来る。6時過ぎ、私もしごとが終わり帰ろうとする。・・・ドアが開かない。鍵が見当たらない。あー!閉じ込められた−!!自分が一番やりそうな失敗を私より先に誰かがやりよった!

このままでは研究室からでられないぜ、と、何とか脱出方法を考える。一番近くに住む同僚に電話する・・・?窓をあけ、外に向かって警備員さんに叫び、鍵を渡して開けてもらう・・・?奥の扉のさらに奥、よじ登ればでられるスペースがあったような・・・(注1)、といろいろ考え、防犯上の理由で詳しくは語れませんがはたと気づく。うち鍵だけがやたら頑丈な別出口があったはず。研究室の奥で外鍵がついていないドアのうち鍵を、がっちがちに固いうち鍵をハンマーでかちかちたたきながら何とか開け、正規の入り口に向かってダッシュ、外鍵を自分の持つ鍵で開け室内をもう一度通過、脱出した扉のうち鍵をもう一度ハンマーで閉め直し、正規の方法ですべての戸締まりをしてやっと脱出。でられた−。家に帰れるー。

防犯意識は高いに越したことはないが、自分が閉じ込められなければ間違いなくそのうち人を閉じ込めてたであろうおっちょこちょいのわたしは、この苦労を同僚にさせませんように、と本当に気を付けようと思ったのでした。いや、もしかしたらもう何度かやってたりして・・・?(注2)同僚が私に言ってないだけだったりして?

注1 もちろん外からは入れません。こちらの建物は建物の中の部屋のドアにもうち鍵があって、ロックしてしまうと外からは入れないって結構あるのです。すべての部屋に鍵。自宅ではトイレにも食器棚のそれぞれの段にもクローゼットのすべての扉にも鍵が有ります・・・。画像はカンボジアで人気のSOLEXのもの。
注2 実はトイレ部分と研究室をわけるところの鍵は何度か同僚が奥にいるのを知らずにかけてしまい、扉をたたきながら怒鳴られたことがあります。てへ。開けると、またおまえか!と言われる。ええ、1度や2度じゃないですごめんなさい。