メコンを上ったり下ったり。

クラチエの現地役人は英語があまり通じないので、プノンペンからの同僚にほぼすべて任せっきりの通訳。が、現地のディレクターがかなり話し好きな人らしく、我々の質問など一つにすごい量の返事が返ってくる。同僚が全部を通訳することをあきらめ、話の終わったところで、ただ、「えー、と、いうわけです」と言うので、「いや、それぜんぜん通訳になってないから!丸投げ!さぼりすぎ!」という爆笑を何度かする。この同僚、調査が終わり次第、早急にプノンペンに帰らなければならないのっぴきならない事情があり、初日の調査が終わったところで、出来れば2日目の調査を早めに終えそのままプノンペンに戻りたいと言っていた。ところが、ホテルに戻り夕飯の待ち合わせにでると一転、明日も丸1日調査をしよう、船に乗って次のポイントに行こう、と言う。何が起きたかと言えば、一時解散して1時間ほどの休憩の間に、プノンペンに電話で問い合わせた結果、彼が急いでプノンペンに戻る理由がとりあえず無くなったのだ。

現金な、と言えばそれまでだがこちらにはとても都合が良い。やる気も出してくれ、夕飯前のわずかな時間で2日目に行く場所の手配、いろいろをしてくれた。そして2日目は通訳も分量多い!あれですね、人は心に心配事がなくなると、目の前の仕事に全力を出せるというとても良い例。そんなわけで2日目はクラチエ州内を最北の区、サンボーディストリクトに上り、区長にお伺いを立ててメコン川の右岸に向かうことになった。

川岸で船を1日チャーターし、メコンをひたすらさかのぼる。船の時速は30km程度。途中の川辺の人の暮らしや水牛の水浴びを見ながら、船長の華麗なルート選択で道中も危なくない。乾季のメコンはかなり水位が下がり、河畔では野菜の栽培がこれから始まろうというところ。護岸に小さな畑を作り、トマトやナスが植えられていた。

目的地に到着、いや、正確には目的地への拠点となる川沿いの集落に到着。とりあえずメシを食え、と言われお弁当とバナナを食べ、ちびっ子がたべているかき氷(練乳イチゴ)がうらやましいけどここでたべるのはかなりチャレンジャーなので我慢・・・たべたいよう。かき氷うまそうだなあ。

さて、目的地はここからさらに山に向かって10キロ以上、とのこと。ここまで船で来た我々に交通手段はないので、バイクを3台かり今回はドライバーなしで調査グループ6人の2ケツ。昨日の3キロも結構大変だったけどね・・・?今日のおまわりさんはバイクも運転する大活躍(注1)。「わたし運転しようか?」と聞いたら全力で「No!」と断られた。そんな即時にみんな同じ反応しなくても。でもこの後の道はほんとうにダートと砂地、山登りだったので、2人乗りじゃ大変だっただろう。運転させろー!ていわなくて良かった。山奥での調査を終え、帰り道は
1台目、ドライバー、現地警察さん、
2台目、ドライバー、現地環境省役人、
3台目、ドライバー、環境省本省役人、
の三つどもえによるラリー。来た道を戻れば良いとわかっているのと、下り坂になったのとで、はねる飛ぶ飛ばす。競わなくていいのに!何でそんなに楽しそうなんだ!途中何度か、「こけたらどっちに向かって吹っ飛ぼうかな」を考えました。鉱山地帯でシルトのふかふかの砂があるのであんまり痛くなさそうだし、バイクにしがみつくと事故が大きくなるのでこけそうなときは自分で吹っ飛んだ方が良いです。ま、実際は2回ほど飛び降りただけですんだ。教授も何度か飛び降りてた。

元の川沿いの集落に戻り、出発地の船着き場に戻るべく今度はメコンを流下するのだが、途中の支流で水を取るよ、と川の中でスピードボートから小舟をさらにチャーター。船から船の乗り換えなどし、2日目の調査はのべ7台の乗り物を使って終了。スピードボートの船長、小さい女の子のお父さんで、帰ってきて陸に上がりすぐ、お母さんに渡されたちびっ子をあやしているのが印象的でした。この国の人はなんつうかとても子煩悩だ。親だけでなく周りにいるすべての人間が、ちいさい子どもをすこし大きくなった子どもでさえも全部がみんなでよく見る。さて明日は最終日、プノンペンに帰るぞー。

注1 今回の調査は現地警察が銃を持っての同行でしたが、警察の動向は危険回避の意味合いだけではありません。実際にそんな危険なことはないのになぜ必要か、と言えば、地方部のさらに地方には各省庁の役人より警察の目の方が行き届いていてネットワークもあるので、地元の人やいろいろなコネクション、警官同士のつながりなどでいろんな情報が入ってきやすかったり、聞きやすい、把握しやすい事情があるのです。もちろんみんなで隠されてしまったらそれまでですが、警察官の仕事の幅広さを感じた。生活支援員のようなことだろうか。
注2 画像はメコン、牛の水飲みと、たべたくてでも断念したかき氷。それからバイクで山奥に向かう教授。私もカメラを抱えていられたのはここまで、あとはダートのなかカメラ構える余裕なし。