トンレサップを上るよ

クラチエから戻って一泊、次の朝にはまた船の上。今度はプノンペンからトンレサップ川を上りトンレサップ湖を縦断してシェムリアップに向かうのです。プノンペンートンレサップのスピードボートは朝7時半出発。時速40kmほどで快調に進み、13時半頃にはシェムリアップに到着します。

トンレサップ川のスピードボートは途中、コンポンチュナン州の州都を抜け、その後はひょうたん型のトンレサップ湖をひたすらシェムリに向かって縦断。トンレサップ湖は巾着型をしたカンボジアの西から中央に広がる、シェムリアップ州、コンポントム州、コンポンチュナン州、ポーサット州、バッタンバン州に囲まれた東南アジア最大の湖です。そのサイズは雨季と乾季で大きく異なり、大概の地図で見るトンレサップのひょうたん型は乾季のちいさいときの形。乾季にはトンレサップ湖→トンレサップ川→メコン川の水の流れが、雨季にメコン川→トンレサップ川→トンレサップ湖(と周辺の湿地(遊水池))に水が逆流を始めると、その湖としてのサイズが大きくなる。

乾季であってもそのサイズは相当で、遡上を初めて3時間ほど、トンレサップにはいったら水平線しか見えない、ということも珍しい光景ではなかった。スピードボートはかなり安定していてほとんど揺れなかったが、雨季の湖が大きくなっているときは波も高く、上司の言うには「自分が行ったときは5メートルくらいの波が立っていてケップ(海の街です)でボートに乗ったときより酷かったよ」とのこと。まあ、穏やかな航行が出来たってことだったのだと思う。乗客は船内ではエアコンががんがん効いて快適な中で眠れるし、船上では欧米人がここぞとばかりに半裸で日焼けをしていて、のんびりな船旅だった。何より船旅は、スピードが一定できちんと進み続けると本当にストレスがなくていいね!バスより速いし、1度は乗ってみることをおすすめします(注1)。

シェムリアップの港は最近綺麗に整えられたらしく、観光船の改札や売店、お土産売り場などが賑わっていた(画像は未だ建設途中の道路)。大型バスで乗り付ける観光客も、バス用、トゥクトゥク用の駐車場もいっぱい、船には降りる前から客引きのトゥクトゥクが乗り込んでくる。我々はまず明日の調査用に船の手配をしなければね、ということで観光船用の窓口で聞いてみる。観光船の窓口は1時間ひとり15ドルの共通チケットを売っているのみ。これでは調査に行けないので何とかボートをチャーターする術を探す。湖畔に広がる水上集落を見に行く、くらいなら出来るのかもしれないが、湖中央に近い場所まで水を汲みに行く、というのはほぼ1日のチャーターになる。なかなか大変だろうな、というのが当初の予想。

ところが船着き場の近くの集落で聞き回っているとおもしろいことがわかった。興味を持ってくれたおじさんが、「おまえたちは観光に行くんじゃないんだよな、観光だと乗せられないぞ」という。トンレサップ湖は今のように船着き場が整備される前には、観光客相手の雑な商売が有り、詐欺まがいのぼったくりも問題になった。そのため政府が一律のチケットを作り(注2)ある程度の管理がはじまり、今の船着き場でチケットを購入する形に落ち着いたらしい。現状のものはおそらくここ数年の話だろう、あるいはもっと直近かもしれない。で、その過程で、自分で客引きをして観光客相手に仕事をすることがおそらく禁止されたのではなかろうか。ここは推測だが、その結果、勝手に観光客を交渉で乗せてはいけない、という事情になったのだろう。あるいはバレると通常の手配の仕事が回してもらえなくなるとか。我々は観光に湖に出るわけではないので、水上集落を回って小学校に上陸したいわけではありません、という説明をし(注3)何とか1日のチャーターに同意してもらった。ここまで、船を下りてからまる1時間ほど。こういったことは実際楽じゃないんです。たかが船を手配するだけじゃないか、とおもうでしょ?でもここに言葉の壁が2枚、お国柄、さらに国の中でも土地の事情、いろんなことが絡むんです。でももう、一仕事終えた気分。これで明日は湖に出れるぞ−!

乗せてくれると約束したおじさん、「ボントンレサップには黄色い水、青い水、白い水があるんだ」と言っていた。へえ,初めて聞いた。こういう仕事をしている人の言葉に従って調査をするのがいちばんだ、と、そのまま明日はその場所に向かってもらうことにする。そしてこの水の色の話は、翌日のサプライズにつながることになります。おや、あのあめ始まって以来の、次回に続く!

注1 道路が悪かった時代にはプノンペンからいろんな場所に出ていたスピードボート、ほとんど無くなってしまい、チケットも高額になり、残っているのはプノンペンーシェムリの便と、ベトナム行きの便だけです。船旅はたのしいのになあ・・・無くなる前に1度どうぞ。画像、ルーフトップで日焼けしながらの船旅も楽しいよ。
注2 現状の1人1時間15ドルも相当高いと思うが、この手の一律チケットは高くなってしまうんだねえ。プノンペンのポートでは人数関係なく1隻1時間15ドルのレンタル(ただし1人1ドルのポート使用料もかかるらしい)があります。
注3 水上集落の小学校や教会、お寺、浄水場は船着き場のそばでも見られます。私は1時間15ドルに乗ったことがないので、どんなところへいけるのかは知りません、が水上集落の小学校や集会所は定番ルートと聞いた。それから、トンレサップ湖にシェムリアップから遊覧にでるときは、雨季の一番水が多いときがおもしろいのじゃないかな、と思いました。お、観光に役立ちそうな情報。