小舟ぐらんぐらん

朝、市場でお弁当を買い込み、果物も買い込み、昨日約束したおじさんのところへ向かう。待ち合わせ場所に到着すると、もうしばらく湖に向かって歩いてくれ、という。乾季なのでかなり先まで船着き場から道が続いているのだ。降りていくとこの船に乗ってくれ、と小さな船を指さされる。これで真ん中までいくのか?と思ったら、おじさんの家は水上家屋なので、出発する船に行くのにまず船に乗らなければいけないのだ。船でどーんと玄関に到着、そのまま次の船に乗り換えて、船長はおじさんの弟です、と紹介され、おじさんが家から枕を投げてくれて、出発準備完了。いや、おじさん、あんた行かないのかい。というか我々に湖の真ん中で昼寝の予定はないので枕は良いです・・・と思ったがこの枕は結局結構役に立つ。

船は時速10kmでのんびりすすむ。このスピードでどこまでいけるんかな・・・?もわからないけど、とりあえず弟の言うままに進む。水面というのは遠くから見ていてはわから無いが、進めば進むだけ波が高くなり、船もぐらんぐらん揺れる。が、涼しい顔で操縦桿というなのエンジン直結のハンドルを船の縁に立ったまま足で操る弟船長(画像、左上)。あんたすげえな。乾季の水が少なくかなり安定した気候の今日でこれだ、きっと雨季の増水した時期のトンレサップは、たとえばベトナムに近づいた台風の余波などある時には途方もないことになっているのだろう(注1)。

結局、弟船長チョイスの一番岸から遠い採水ポイントまでは、だいたい3時間、トンレサップは縦長の湖なので、ど真ん中ではないだろうがバッタンバンからの流入河川の澪筋に近いところには居たのじゃないだろうか。水を汲み、ここから水を汲みながらまた岸まで帰ろう、というところで、ガイド兼通訳をがんばってくれていたカンボジア人がダウン。私は今まで乗り物に酔ったという体験のない人で、おそらく極端に三半規管の強いタイプ。教授も乗船経験が多く、ほぼ問題の無い方。だがガイド氏は、通常には無い通訳と、船の上で地図を見て船長に説明をして、を繰り返していて具合が悪くなったらしい。もう帰るだけだから大丈夫です、と、おじさんの放ってくれた枕を積み、ガイド氏が船上で昼寝。のんびり船でメシを食う我々の隣、ガイド氏はもちろん昼寝、というかくたばっている。すまんかった。

採水を終え、水上家屋に戻ると、なぜか昨日話を始めに聞いてくれたおじさんが。黒い水だ、黒い水を汲んできたぞ、とペットボトルをくれた。事情が全然わからない日本人、とりあえず邪魔するよ!と水上家屋に上がり込み、ガイド氏をたたき起こし通訳を依頼する。すると、おじさんは「昨日話を聞いたとき水を汲みたいのはわかったが、俺は湖の反対の岸に客を届ける仕事があった。だからおまえたちを連れて行けなかった。で、弟船長の一家を紹介した。朝、おまえらが反対の岸にも行きたがっている連絡が来たので、それは弟船長の船じゃ間に合わないから、俺が行ったついでに水を汲んできたぞ。これは黒い水だ」という。おお!まったく知らないところで2方向に調査が進んでいた!思わぬ感じで広範囲にサンプルゲット!地図を引っ張り出して場所を聞くけど、結局わからないけど(地図読まないから)、どうもお気遣いありがとう。この水は日本まで行くよー。

さてこれでのべ7日間の試料採取旅行は終わり(注2)。後はシェムリアップからプノンペンまで、飛行機でばびゅーんと帰りました。最近になって気がつきましたが、カンボジアは北緯10度くらいのところにあるので、一応昼夜の長さが一年で変わるのです。最近昼が短いな、を、プノンペン空港到着時の暗さを8月に同じ飛行機を使った時と比較して知る。カンボジアもこれからすこし寒くなります。

注1 カンボジアには台風はほとんど来ませんが、ベトナムやタイに来る台風の影響を受けて、雨季にそれらしい荒れ方をすることがあります。まあ、台風無くても雨季の風を伴うスコールは台風と同じすさまじさですが。昔は本当に台風来なかったのに、最近気候がおかしいよ、とは、どうして今年の乾季はこんなにあっついんだ!と怒っている同僚の談。
注2 書かなかったけど、クラチエ出発前日はプノンペン市内の調査にうろうろしていました。毎日外仕事というのは結構疲れるね・・・そして私はまた真っ黒になりました!チャイニーズクメールの同僚にならぶと私の方が黒い!
注3 画像は弟船長、湖の中のお寺、道路標識ならぬ水路標識。水路標識は、澪筋がせまくなるので乾季は追い越しだめよ、みたいな意味らしい。